読売新聞の記事で興味深いものがあったので、下記に添付します。


外国人労働者、特にフィリピンからの労働者の特殊な環境についての見方に物足りなさを感じますが、客観性と合理性を最重視せざるを得ないマス・コミの記事である以上、致し方ないのかと思いました。
フィリピンからの労働者の“今目の前にある現実的な問題”に、常に取り組んでいる私達の事務所から視ての感想です。


介護の現場からの声については、私達の現場でのインタビューに近いものもあり、改めて納得したり感心したりでした。
4月の訪中に続いて5月位にはアロヨ大統領の訪日でもありそうですが?、その時はそこで多少の進展が見られるのでしょうか?

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介護人材最前線(読売新聞記事より)

◆人手不足深刻、離職防止へ工夫…マニュアル作り、仕事内容明確に
 景気回復に伴って介護分野の人材不足が深刻になっている。介護報酬が低く、仕事に見合った収入が得られないことが課題とされているが、報酬引き上げには抵抗も大きい。解決には何が必要だろうか。


◆「職員に呼び止められると、『また辞めるのか』と、どきりとする」
 首都圏にある特別養護老人ホーム(定員50人)の施設長が打ち明ける。ここ数年、退職者の穴埋めをしたくても人が集まらない。介護の質を上げるため、国基準(入所者3人に介護職員1人)より多い2対1の配置を維持してきたが、2・4対1となってしまった。5月に20人分を増床するため、職員10人を募集したが、集まったのは8人。施設長は、「5年前なら困らなかった。職員の質にこだわりたいが、そうも言っていられない」と嘆く。報酬切り下げで、昨年は昇給を凍結した。ベテランが燃え尽きて辞める例も目立つ。「入所者への影響が心配」と表情を曇らせた。
 介護保険が始まった2000年の失業率は5%近くで、深刻な人手不足に悩むことは少なく、むしろ雇用の受け皿と考えられてきた。しかし、中央福祉人材センターによると、05年から上昇した介護分野の有効求人倍率は、昨年11月には過去最高の2・25倍を記録。腰痛や夜勤のストレスなどから介護労働者の離職率は20・2%と全産業平均(17・5%)より高い。「求められる専門性が高まっているのに、待遇が悪すぎる」と日本介護福祉士養成施設協会の小林光俊副会長は指摘する。協会には専門学校や福祉系大学など約400校が加盟するが、ここ数年、7割が定員割れ。大学の場合、一般企業に就職する卒業生も目立つ。


◆〜給与にメリハリ
 人件費の原資となる介護報酬のアップは、高齢者の負担増が伴うため一筋縄ではいかない。そこで仕事へのやりがいを高め、安心して働き続けられる職場環境を作ることも重要となる。神戸市内で5か所の特養を運営する神戸福生会の中辻直行理事長は、「自己成長につながる仕組みを作れば、離職を防ぐことができる」と強調する。
 約250人の介護職員は、年2回、職員と法人が共同で作った「業務自己評価シート」を記入する。「自己決定の尊重」「事故防止」「情報共有」など46項目を5段階で自己評価した結果を上司と話し合い、目標や課題を明確にしていく。また、基本的な介護動作のマニュアルも作成した。01年には年功序列を改め、介護職員からでも年収1000万円台の施設長になれる職務体系を構築。給与面でもメリハリを付け、将来設計を立てやすくした。離職率は年5%程度。全国から新卒者が集まる。「人材育成をしなければ職員は逃げ出す。また、過剰な設備投資が人件費を圧迫している施設も多いはず」と中辻さんは見る。


◆〜勉強会 年26回
 在宅介護でも、職場環境改善の動きがある。
 東京・杉並区で訪問介護を行うクロス・ロードでは、サービス提供前に、介護の提供範囲や手順について利用者とヘルパーが合意。マニュアルをもとにヘルパーに求める能力もはっきりさせ、不足分は研修で補う。勉強会も年26回、開催する。約70人の介護スタッフのうち、勤続3年以上が半数を占める。馬袋秀男社長は「仕事内容をはっきりさせることが、働く側の安心感につながる」と話している。
 堀田聰子・東大社会科学研究所助教の話「一通り仕事ができるようになる前に介護の仕事を離れてしまう人が多い。仕事に対する不安感や孤立感を和らげることが大切だ。仕事内容を明確化し、介護職員の『参加意識』を引き出すようなコミュニケーションを図り、能力に応じた配置や処遇を行うなど、限られた人件費でも工夫の余地は多い。現場管理者の役割の見直しと育成がカギだ」


◆注目の戦力、在日フィリピン人…思いやりの心、言葉の壁越え
 人手不足に悩む介護現場で、職員として働く在日のフィリピン出身者が増えつつある。昨年9月、フィリピンから介護人材を受け入れる協定が日比両国間で締結されており、その先駆け的な存在として注目される。
 「明かりをつけましょ、ぼんぼりに――」。お年寄りの手を取り、ひと月遅れの「ひな祭り」を一緒に歌うのは、在日フィリピン人のグロリア・ディアスさん(40)。2月から、愛知県稲沢市特別養護老人ホーム「第二大和の里」(定員100人)で正職員として働く。「フィリピンでは大家族が当たり前だから、ここは自分の家みたい」と、笑顔を見せる。母国では学校教員だった。12年前に来日。日本人と結婚し、出産、離婚を経験した。定住資格を持ち、スナックに勤めたが、「昼の仕事で、日本人と同じように働きたい」と、日本のヘルパー2級を取得した。日本語の会話は流暢(りゅうちょう)だが、漢字は苦手。介護記録は日本人職員が代筆する。


◆〜役割分担
 「第二大和の里」では、1年半前からフィリピン出身者が働く。今は正職員2人と派遣1人が在籍。介護職不足のなか、「フィリピン人はお年寄りを大事にする。日本語さえ通じれば戦力になると考えた」と、佐藤和夫理事長は説明する。意思疎通や介護技術に不安もあったが、問題はなく、むしろ、丁寧な介助が入居者に喜ばれた。「車いすからの移乗介助の際、さりげなくお尻に触れてオムツの状態を確認する。そんな思いやりの手が自然に出る」と、竹中麻香・副施設長。書面で引き継ぎが必要な夜勤は任せられないなど、課題はある。「日本人職員との適切な役割分担が重要」(竹中副施設長)だ。


◆〜養成校も
 2年ほど前から、在日のフィリピン出身者向けヘルパー養成校が登場。すでに700人程度がヘルパー2級を取得したとみられる。
 在日外国人向け通信事業を展開するアイ・ピー・エス(東京・中央区)も、一昨年秋にフィリピン出身者向けの養成校を開設。これまでに約350人が修了した。修了者を介護施設に派遣する事業も行っている。横浜校で受講する田辺ケイさん(32)は、日本人と結婚している。食品工場に勤めたが、キャリアの向上は望めなかった。「介護の仕事なら、経験によってレベルアップでき、誇りが持てる」と言う。講義では電子辞書を駆使し、英語と日本語でノートをつける。施設に就職するため、漢字の習得にも力を入れる。アイ・ピー・エスの担当者は、「派遣先からの評価は高く、修了者では足りないくらい要請がある。時給も平均より高め」と話す。また、懸念された利用者や家族からの苦情もないという。
 一方、外国からの介護人材受け入れを巡っては、「文化や生活様式が違う外国人に、高齢者の介護は無理」「外国人が低賃金で働けば、介護従事者の労働条件が悪化する」などの声も聞かれる。日本介護福祉士会は、「現在の介護従事者の労働条件改善が先決」という内容の見解を示している。在日フィリピン人介護士協会の篠沢ハーミ会長は、「パイオニアである会員たちの評価が低ければ、外国人介護士の受け入れに影響を与える。その自覚を持って頑張りたい」と話している。


◆〜政府案2年で600人、対象者は限定的に
 政府は、昨年9月に締結した協定の発効後、2年間でフィリピンから600人の介護人材を受け入れる計画だ。「実務経験コース」は、フィリピンの看護大学卒業者らが対象。日本の介護施設で働きながら研修し、4年以内に国家試験を受験して介護福祉士の資格を得る。「養成校コース」は、同国の4年制大学卒業者が対象。日本の養成校を卒業して資格を取得する。ただ、「相当の日本語能力が必要で、対象者は極めて限定される」との見方が、介護業界では一般的だ。
 (4月10日、11日 小山孝、林真奈美)
情報元 http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_07041332.cfm