家族と介護のお話 その2

入所当初は三男坊に騙されて入れられちゃったと、誰彼と構わず言っていたK婆ちゃんも、自分がボスになれる団体生活が満更でもないらしく、段々と元気になり益々活発な口煩い婆ちゃんになっていきました。
隣の敷地には温泉療養型総合病院も併設していましたが、外出・外泊が申告制ですが自由なので、当初は三男夫婦が頻繁に近くの湯治場に日帰りや1泊程度でK婆ちゃんを連れて行きました。


実はこの施設、介護職員が結構さばけていて、K婆ちゃんの性格や家庭環境等を鑑みて、事前に三男坊と何度も打ち合わせをしていたのです。施設からみても活気があり、リーダーシップをとるK婆ちゃんは徐々にありがたい存在になって重宝していたのです。


K婆ちゃんは持病の腰痛に悩まされていました。心臓バイパス手術も受けていたので入所前に要介護2の認定を受けていました。K婆ちゃんは介護保険の適応があるので、4人部屋の時は三食おやつ付で月額7万円程度でしたし、個室に移ってからは別途個室代が日額2千円程度掛かりました。


施設に入居中は長男の嫁さんが週に2回定期的に通っていました。仕事のある嫁さんにとってはそれなりに大変だったこととは思いますが、同じ屋根の下で生活する事を思えば、かなり精神的負担は軽いらしく、K婆ちゃんも素直に“ありがとう“が言えるような好ましい状況になりました。
また次男・三男も月に2回日曜日に定期的に訪問するようにしました。K婆ちゃんにとっては施設で一番訪問者の多い入居者になって、皆から“K婆ちゃんは幸せですね。”と言われるのが嬉しいらしく、益々元気になって行きました。


この施設は療養型のため、基本的には“良くなって自宅にお帰り下さい。”を前提にしておりましたので、最長でも3ヶ月までしか居られません。しかしマメな三男坊は一計を案じ、3ヶ月毎にある程度自宅に帰り、そして再入所を繰り返しました。これはベッドや個室の空き具合もあり、極端な話ですが入居したら直ぐに次の再入居の手続きを行うつもりの準備と、施設との良好なコミニケーションが必要となります。
しかし何度も繰り返している内に、行政から指導が入ったみたいで結局1年半で次の施設に移ることに成りました。
ここで三男坊は次の手段を講じなければならない境遇に落ちいってしまったのです。


三男坊は公立の特別養護老人ホームの入居申請もしておりましたが、ここは入居待ちで理論上は10年待たなければ入れないという悲惨なものでした。その内に介護保険の改悪があり、特別養護老人ホームは今までの順番待ちではなく、介護度の高い方から優先入居に変わり、K婆ちゃんでは実質入居不可能な状態でした。