先日宿泊したホテルの有料映画で思いも掛けずに傑作に出会った。これ程の鑑賞後の後味の好さは久しぶりである。


ハリウッド映画ではないので私の知る名前の俳優は皆無だったが、プロデューサーがロバート・レッドフォード、監督はウォルター・サレス、たしかブラジルの名画“セントラル・ステーション”の監督であるはずだ。流石と言うべきなかなか趣の深い映画である。
クリント・イーストウッドショーン・ペンロバート・レッドフォード、等々良い役者は良い監督やプロデューサーになるものだ。
主演のゲバラ役は、ガエル・ガルシア・ベルナル であるが知らない役者である。


キューバ革命の英雄チェ・ゲバラの青春時代の放浪記である。
舞台は南米アルゼンチン、昭和27年のことである。23歳の医学生ゲバラは大学の先輩と1台のボロオートバイに跨って南米一周の旅に出る。野宿したり働きながらの9ヶ月間、1万2千キロの旅であった。今で言う卒業記念旅行みたいな軽い旅の予定であった。
裕福な建築技師の家庭で、喘息持ちとはいえ何不自由無い、ある意味お坊ちゃま君のゲバラにとって、先々で出会う世界の現実は大きなショックを与えた。


警察を金でまとめて、収穫直前の小作人を追いやる地主、原住民の土地を略奪する白人、貧しい人々を家畜並みに扱う鉱山主、思想の為のみで迫害される共産主義者
そして驚くことは、ハンセン氏患者のコロニーを訪ねた二人が、ハンセン氏病は感染しないと言い切るところである。昭和27年が舞台である。日本ですら厚生省が正式にハンセン氏病の隔離政策の間違いを認め、謝罪をしたのは極最近のことである。


社会の矛盾に出会った、生真面目な青年が、生真面目に対応しようとすればするほど、矛盾の壁に衝突する。
革命の英雄となるゲバラのきっかけ(萌芽)が芽生えたのは、この時ではとメッセージしている様だ。
ゲバラが革命の英雄となった理由がここにある。ゲバラは真面目に考える。全ての事に不器用な位真面目に考えるのだ。女性を口説く時も真面目すぎて不器用なのだ。


同行した大学の先輩アルベルト(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)が上手い、女好きのC調振りを実に好演している。
政治的な事よりも、青春時代が現実の味を知って、大人にならざるを得ない、ちょっと酸っぱい物語と観ても楽しめる映画である。青春の尻尾への賛歌かもしれない。
生存する大学の先輩アルベルトが原作者だとのことなので、基本的には実話であるらしい。
このアルベルトもゲバラに招かれて、キューバ医大を設立した。


ゲバラは生きていれば現在77歳、卒業後メキシコでカストロに出会い、共にキューバ革命を成し遂げ、共産主義革命の旗をアフリカや南米諸国で振り回した、そしてボリビヤ政府軍に銃殺されるのだが、裏で操っていたのが米国のCIAであったとの噂は本当だろう。確か39歳の時であった。


ゲバラって、髭モジャの顔でTシャツのデザインになってるだけじゃないですね。